spare time を楽しい時間に

WEB小説(特にカクヨム)の紹介をメインにその時々の雑記

作品紹介 「瞬光の時」  作者 織辺 優歌

不倫モノを今日はご紹介。 

kakuyomu.jp


独身OLの主人公緑川倫子。

同じ会社の村川大輔と愛人関係になる。やがて、倫子は塚本という男性と結婚する。しかし、村川のことも忘れられない倫子は……。

人生の岐路に立たされた倫子は決断を迫られる……。

 

感情と理性の間で揺れ動く女性の心理が描かれた作品です。

主人公の倫子の判断や行動は、理性的に見れば褒められたものではない。しかし、人間ならば必ず、不倫でなくても倫子が抱えたような迷いに落ちることがある。だから、この作品に触れると、どこか人ごとではない感情を持つ。

結末、倫子は決断する。その後の幸せを祈らずにいられないのは、過ちを犯した者であろうと、人生をやり直すチャンスがあって欲しいと願うから。

 

 ドロドロの不倫モノというだけでなく、倫子の人生に同情を覚えてしまう読後感が残るのは作者さんの心理描写が丁寧なおかげでしょう。

 

 禁断の愛、揺れ動く女性の心理。

 この作品で是非体験してください。

作品紹介 「儚くも永遠の愛の旋律」  作者 多風 つも花

切ない恋愛を描いた作品をご紹介。 

kakuyomu.jp

 シャンソン歌手アンナとピアニストのレオン二人の純愛を綴った作品。

 二人は古びたライブハウスで出逢う。そして惹かれ合い愛し合うようになる。だが、アンナは人妻であり、関係が冷めてるとは言え旦那がいる。離婚してレオンへの愛を通そうとするアンナの目の前から突然レオンは消えてしまう。

 やがて二人は再開しお互いの愛を確かめ合うのだが、レオンが消えていた理由と、その時のアンナは……。

 

 この作品、ストーリーも良いのですが、とにかく音楽と情景の描写が素晴らしい。おかげで、作品の世界へ没入する際も、脳内に曲が流れ、描写された世界が浮かんでいる。

 

 音楽や楽器が登場する作品では、読者に伝わるような表現が難しい。そこらに置いた花瓶でも構わないだろうと思われるような役割しか無い楽器や、クラシックでもジャズでもアニソンでもどうでもいいだろうと思われるような曲としか感じない場合がしばしばある。要は楽器も曲も、その作品では必然ではないケースをしばしば見かける。

 

 しかし、この作品はそうではない。

 

 ピアノを弾くレオンの指がアンナに触れる艶めかしさ、シャンソンの持つ雰囲気とアンナの空気が被る品の良さ。曲も楽器もこの作品では必須なんです。作品内で時折出てくる音楽に関係する場面の描写がとにかく素敵です。

 

 いやぁ、WEB小説でこんな描写する方がいるのかと私は驚きました。私が読んだ作品のうちで、かなり上位に入る描写力の作家さんと思いました。

 

 切ない恋愛モノが好きな方には是非読んでいただきたい作品です。

作品紹介 「間違えやすい日本語表現」  作者 澤田慎梧

 日本語の誤用チェックする際に参照したい作品をご紹介。

kakuyomu.jp

 言葉は、同じ文字でも時代の経過に伴って使われ方が変わり、本来の意味と異なって使われることがあります。私も誤用することは多々あり、他人から注意されたこともあります。

 この作品は、そういった誤用されやすい語彙を辞書等で調べた情報のコラム集です。 

 

 小説を創作するとき、ブログを書くとき、私達は日本語で記述する機会が多い。優しい読者さんなら、過ちを指摘してくださることもあるでしょう。ですが、誤用されてることが判らない、もしくは判っていてもわざわざ指摘せずに済まされることが多いでしょう。そういった中には、誤用の多さのせいで呆れて訪問しなくなるかもしれない。

 

 もちろん、小説創作でもブログ運営でも、ものを書くときに辞書でちゃんと調べる習慣があればよいのです。ですが、日常的に誤用している語彙はなかなか調べられていないから誤用されてるのです。そう考えると、気づきを与えてくれるこの作品はとてもありがたい。

 

 コラム形式の作品で、私達と同じ目線で書かれた内容ですので、上から目線に苛立つこともありません。ほんと、とても有り難い作品です。

 

 文章を書く機会は、日本人なら誰にでもあります。時間があるとき、一話ずつでも読んでみてください。きっと誤用していた語彙を見つけるだろうと思います。

 そこから先は、誤用のまま使用し続けるのも、誤用を正して使用するのも皆さんの自由です。ですが、他の方は間違ってるのに、正しい言葉を使っていると知られたなら、それが判る相手は誤用に注意している方なので皆さんを見る目が変わると思いますよ?

作品紹介 「KISS or KISS ? ―メイクアップ・ハロウィン―」  作者 氷月あや

年下の男の子に恋する女性の短編をご紹介。

kakuyomu.jp

  8歳年下の彼氏を持つ主人公。

 ハロウィンで仮装するため彼氏に化粧する彼女の心情描写が可愛らしく、そして艶っぽい作品。

 

 彼氏は日頃、理知的でクールな感じなのだろう。その彼氏が彼女と居るときに見せる年齢相応の反応に彼女はときめく。いわゆるギャップ萌えというやつだろう。

 作者さんの心情描写は、ギャップ萌えしている彼女の心の動きを読者にリアルに伝えてくる。年上の余裕と焦れている様子に、小憎らしさと愛らしさを感じて、ついニヤついてしまう。読者が女性ならば、年下彼氏の幼さの残る反応にも萌えるのだろう。

 

 以前紹介した「作品紹介 「CHEEKY X’MAS―愛しの生意気エイティーン― 作者 氷月あや」も年上の女性と年下男性の恋愛短編。この作者さんの年上女性×年下男性の短編作品はとても素敵だ。

 といっても、この作者さんの作品全て読んでるわけではない。だが、丁寧で読者を惹きいれる心情描写が上手な方なので、他の作品も面白いのだろうと期待している。

 

 ハロウィンにはまだ早い(本日2017/10/13)が、ハロウィンの雰囲気を思い出しつつ、この可愛らしい短編を楽しんでいただきたいです。

作品紹介 「きっとありえた死と恋の音が遠ざかっていく」  作者 冬野瞠

ちょっと切ない恋慕を感じる短編のご紹介。 

kakuyomu.jp

 戦で怪我を負い、一人で粥も食べられない主人公の初雪。

 そんな主人公に粥を匙で食べさせながら、初雪を想い気遣う木蓮。

 万全な身体じゃなくとも戦に出かけた初雪を、やや責めるような様子で木蓮は気遣う。家の事情で、多少怪我をしていようと戦に出ることを避けられない立場と、木蓮への想いを抱える初雪の心情と様子が描かれている。

 

 きっと再び戦があれば、初雪は出て行くのだろう。そのことを木蓮は理解している。理解しているから、自分の気持ちも考えてくれと初雪を責めている。木蓮の気持ちを理解している初雪は、戦で死にかけたとき、木蓮のことを想ったと伝える。

 

 この作品には登場人物達の性別をはっきりと現わす語彙はない。

 だが、木蓮の様子を描写した語彙に「たおやかな手」とあるから、木蓮は女性なのだろう。また、「同じ性を持つ」と初雪の木蓮への気持ちを描写している箇所にあるから、この二人はどちらも女性なのではないか。そして手のサイズの描写「自分より幾回りも小さい手」というところから、木蓮は初雪よりもだいぶ若いのではないか。

 つまり、同性の恋愛の物語なのではないかと感じた。

 

 皆さんはどう感じるだろうか?

 

 2000字そこそこの作品です。切ないストーリーとともに、描写の一つ一つを吟味して楽しんで下さい。