作品紹介 「横浜アニバーサリー」 作者 かがみ透
横浜の風情を感じさせてくれる短編をご紹介。
ある夫婦の食事とお酒、散歩する様子を通して横浜の情景を綴った作品。
私は学生時代、横浜から京浜急行線で十数分の上大岡に住んでいたので、友人や彼女と横浜の港側の山下公園や中華街にはたびたび行っていたことを懐かしく思い出した。
この物語自体は、横浜が舞台でなくても良いのだろう。でも、作者さんの横浜への思い入れが、情景描写で強く感じられていて、作者さんにとっては横浜でなければならなかったのだと感じる。
その思いが横浜へ行ってみたいなと読者へ感じさせるのだろう。まして、私のように作品内で触れられている場所を知っていれば尚更だ。
ブリキのおもちゃ博物館、ああ、そばを通っても、友人に教えて貰わないと気付かなかったな。
港の見える丘公園、山側の出入り口に入園可能時間の看板があって、その時時計で確認したな。
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昔の思い出が蘇ってくる。
そう離れた場所に住んでるわけではないのですが、最近行ってないせいかノスタルジー感じましたね。
この作者さんが小憎いのは、ちょっとした情景描写が響くところです。これが横浜の空気を感じさせる。フカヒレマン、シュウマイ弁当、東京ではちょっとした駅ビルなら売っているのだけど、でもイメージは横浜だ。
そういったワードをちょこちょこと出してくるものだから、登場人物の夫婦のやり取りに思いを巡らせながら、同時に、自分の思い出をなぞっている。
そしてきっとこういった描写の数々が、横浜へ行ったことのない読者へも空気が伝わるのだろう。
作品内のご夫婦の素敵なデートを見守りながら、横浜を感じて欲しい。
そう思える短編作品です。