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作品紹介 「きっとありえた死と恋の音が遠ざかっていく」  作者 冬野瞠

ちょっと切ない恋慕を感じる短編のご紹介。 

kakuyomu.jp

 戦で怪我を負い、一人で粥も食べられない主人公の初雪。

 そんな主人公に粥を匙で食べさせながら、初雪を想い気遣う木蓮。

 万全な身体じゃなくとも戦に出かけた初雪を、やや責めるような様子で木蓮は気遣う。家の事情で、多少怪我をしていようと戦に出ることを避けられない立場と、木蓮への想いを抱える初雪の心情と様子が描かれている。

 

 きっと再び戦があれば、初雪は出て行くのだろう。そのことを木蓮は理解している。理解しているから、自分の気持ちも考えてくれと初雪を責めている。木蓮の気持ちを理解している初雪は、戦で死にかけたとき、木蓮のことを想ったと伝える。

 

 この作品には登場人物達の性別をはっきりと現わす語彙はない。

 だが、木蓮の様子を描写した語彙に「たおやかな手」とあるから、木蓮は女性なのだろう。また、「同じ性を持つ」と初雪の木蓮への気持ちを描写している箇所にあるから、この二人はどちらも女性なのではないか。そして手のサイズの描写「自分より幾回りも小さい手」というところから、木蓮は初雪よりもだいぶ若いのではないか。

 つまり、同性の恋愛の物語なのではないかと感じた。

 

 皆さんはどう感じるだろうか?

 

 2000字そこそこの作品です。切ないストーリーとともに、描写の一つ一つを吟味して楽しんで下さい。