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WEB小説(特にカクヨム)の紹介をメインにその時々の雑記

作品紹介 「翠浪の白馬、蒼穹の真珠」  作者 結城かおる

 中華風ファンタジー作品をご紹介 

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 辺境の北方部族の姫君レツィンが、国都の瑞慶府へ送られる。そこで3人の男と出会う。王の酷い政治が行われる中、レツィンはそのうちの一人と恋に落ち、そしてこの国の真実を知り男と共に瑞慶府から去る。

 

 武芸に秀でたレツィンが王宮で女官となり、周囲の人達と接していくうちに精神的に成長していく様子が、丁寧に選ばれた語彙で感情豊かに活き活きと描かれている。

 

 WEB小説にはライトノベル的な作品が多いけれど、文芸作品と呼んで構わない作品もそれなりにある。この作品もその一つだ。ストーリー、世界観、展開、描写、どれをとっても奇をてらわずに、読者に正面からぶつかってくる。こういった作品で読者を楽しませるのは作者に力量が求められるだろう。作者さんにはその力量がある。

 

 中華風な作品は、描写で使用される語彙に特徴があり、まずそこで読者の好みが分かれるかもしれない。だけど、三国志水滸伝などで中国の時代小説に親しんだ方には、違和感のない描写とストーリー展開に感心して貰えると思う。

 

 欧米や日本の中世時代風作品とは一味違う内容を、是非一人でも多くの方に堪能して貰いたい。レツィンを待つ苛烈な状況の先に待つものを読者に味わっていただきたいです。

作品紹介 「永遠の愛は、胸が痛むほど、」  作者 安室凛

憧れから始まった恋愛作品をご紹介。 

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 憧れていた無敵のテツと付き合うことになった高校二年の「私」が、大学二年、社会人二年になった時に感じている気持ちが作品化されています。

 

 高校生の時、泰然として不敵だったテツが、大学二年で様子が変わり、社会人二年目では「私」のヒモ同然になっていく。そのテツに寄り添う「私」。

 「私」の中でもテツへと自分自身への視線が変わっていく。

 そして今のテツに対しても愛情があることを自覚し、憧れていたテツではなく今のテツと向き合う覚悟を決めてこの作品は終わる。

 

 「富士見L文庫×カクヨム 美味しい話&恋の話 短編小説コンテスト」の中間選考を通過し、現在、最終選考の候補となっていて、女性の視点で読んでも、男性の視点で読んでも、何かしらの感情が湧いてきて切なく刺さってくる。

 

 ラブラブで楽しいわけでも、ハートブレイクで辛いわけでもありません。これからの二人の先にはトラブルが待ち受けている予感もします。

 それでも、「私」かテツに、どこか自分を重ねてしまうところがあり、作品世界に引き込まれる作品です。 

作品紹介 「週末は異世界で賢者やってます。」  作者 パクリ田盗作

内政チートの基本を教えられるファンタジー作品をご紹介。

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青年海外協力隊の一員だった天城将和が、知識と経験をもとに異世界ウルで賢者として様々な技術を伝えていく。

地球における現代知識を異世界へ伝えていくという作業には、実際の経験がない方には判らない苦労や注意すべきことがある。そのことをリアルに教えてくれる。

例えば、

実際青年海外協力隊に所属していた時代に電気ガス水道すら無い後進国の田舎にこの煮沸消毒の概念を教えたら赤子に熱湯をぶっかける事件が起きて大変だった。

 という箇所など、現代の日本に住み生活する私達なら体験しないであろうことが注意点として記述されている。

 こういったことも、この作品を作るにあたって、作者さんの友人から体験等を聞き、その方の実体験を元にしているから書ける話です。

 また、「作品紹介 「ファンタジー作品に使えるかもしれないふわっとした中世ネタ」 作者 パクリ田盗作」でご紹介したように、作者さんがもともと持つ知識も反映されている。おかげで異世界ファンタジーでありながら内容がとにかくリアルです。

 

 リアル感を意識したのか、描写も淡々としたモノになっている。だから読者も観察者のような視点でストーリーを追っていける。

 

 内政チートに関心ある方なら一度は読んでいただいて損はしない作品です。単純に楽しみたい方、内政チートの知識を手に入れたい方にお勧めの短編です。

 

 

余談:

 この作品は、「カドカワBOOKS×カクヨム“日帰りファンタジー”短編コンテスト」参加作品です。最近まで読者選考期間で、読者の反応がコンテストの結果を左右するので、さして影響はないかもしれないけれど、当ブログではこのコンテストに参加してる作品を紹介するのは控えていました。

 面白い作品が、今日ご紹介した作品の他にもありますので、是非、読んでいただければと。当ブログでもご紹介していきます。

作品紹介 「いいね」  作者 柊

故郷を離れて生活してる大学生のお話をご紹介

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 田舎から離れて大学へ通っている”かー子”を見る私視点の短編。

 反対されて実家を離れたかー子は、帰省を戸惑っている様子。「私」が出した、母から送られてきたクッキーを見て「いいね」とつぶやく。

 

 私も実家から離れて大学へ通い、そして今も離れて暮らしています。かー子のように事情は無いけれど、帰省しなければならない理由がないとなかなか帰省しません。

 

 この作品では、「会いたい人が居るなら、多少事情があっても帰省したほうがいいよ」と「私」が語りかけてきます。ああ、確かに、家族だけでなく友人も居るから、帰省する理由など彼らに会いたいという気持ちがあればそれでいいんだな。そう感じました。

 

 わだかまりから帰省せずにいたかー子の「いいね」に込められてる気持ちは、何でしょう?

 実家との繋がりが途切れているかー子の「私」への羨望?

 それとも、また別の理由があるのか?

 作品内では、羨望だろうと受け取れます。

 

 しかし、遠く離れた故郷への思いは、読者毎にいろんなものがあるから、「いいね」は別の意味を感じさせるかもしれない。ここでは書きませんが、私がそうだったから。

 

 3000字ちょっとの短編ですが、帰省する意味、家族との繋がりを考えさせられる作品です。

作品紹介 「Dragon Palace」  作者 如月芳美

童話風なファンタジー作品をご紹介。

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  少年カイが旅の途中で知り合った仲間達と成長して勇者へと。そう、ドラゴンクエストのようなRPGゲームを小説で読んでいるかのようです。

 

 童話風と書いたように、バトルシーンなどの描写よりも、仲間達との会話や旅先で出会うイベントの描写を楽しむ作品ですね。主人公に自分を重ねるのではなく見守るように楽しむ作品です。

 

 勇者だった父を追い求める主人公カイは、仲間達との会話を通して、父の姿、思いを掴んでいきます。そうしながらドラゴンパレスの謎を手に入れ、向かいます。こうして書くと勇ましい様子を思い浮かべますが、そうではなく全体を通して可愛らしいんです。そこが童話風ファンタジー作品と書いた理由です。

 

 ほのぼのとしたファンタジーを探している方に読んでいただきたい。

 総文字数36万字と文庫本三冊程度、上中下巻の作品を読むと考えていただければいいかな。休日にのんびりと、少年カイの成長を楽しんでください。